2026年10月31日(土)に日暮里サニーホール・コンサートサロンで「古畑喜代美 ソプラノリサイタル A Journey Through Light~光をたどる音楽の旅~」を開催いたします。リサイタルに向けて古畑喜代美さん、石川和男さんにインタビューいたしましたので、ご覧ください。
インタビュー
今回のリサイタルに向けての抱負を教えてください。
古畑さん:第4回東京国際管弦声楽コンクールに入選しましたことをきっかけに、東京国際芸術協会様には、このような機会を与えていただきまして、深く感謝申し上げます。
ソロリサイタルは、2022年から始めて4回目になります。回を重ねるごとに、音楽を届けることの喜びとともに、責任も重く感じるようになりました。聴いてくださる方の心に届くよう、オペラの場面や人物の気持ちが伝わるよう、音符一つ一つを丁寧に追って情景をイメージするのですが、感情に振り回されることなく、細部まで描き出すためには、非常な冷静さも必要で…。毎日、のた打ち回っております。
今回は、日本語やドイツ語、イタリア語、歌曲からオペラ・アリアまで、幅広い歌を聴いていただきます。季節や自然、悲劇や喜び、祈りなど、世界の至る所で人々が日々味わう感情に寄り添いながら、多くの人々に感動を巻き起こした数々の楽曲に光を当てます。
タイトルは、「A Journey Through Light」です。この夏は、音楽の都ウィーンに滞在し、モーツァルトハウスでの演奏会に出演したり、ウィーン国立音楽大学のマスタークラスを受講したりする中で、多くの学びや温かい出会いに恵まれました。こちらをお読みくださいました皆様と、いつもお世話になっております全ての方々への感謝を胸に、光をたどる音楽の旅をお届けします。どうぞ当日は会場に足をお運びいただき、お楽しみください。
石川さん:古畑喜代美さんは、私が学校法人武蔵野音楽学園にて非常勤をしていた頃の同僚にして先輩であります田村彰子先生の私設音楽教室にて学ばれる生徒さん。
今ではともに学園を離職していますが、度々伴奏のお声がけを頂いており、数年前、古畑さんとのご縁をいただきました。
古畑さんが歌の勉強に注ぎ込むエネルギーは目を見張るものがあります。
お仕事の傍ら週末はすべてレッスンとコンクール、勉強会や受賞者演奏会出演等に費やし、この夏は2回目となるウィーン国立音楽大学での講習会に参加、本当に素晴らしい研鑽を積まれています。
まっすぐでピュアなお声、飽くなき探究心で組み立てられる表現…
そんな古畑さんの魅力をぜひご堪能ください。
演奏する曲の聴き所などを教えてください。
古畑さん:
平井康三郎作曲
「甲斐の峡」
秋が深まりゆく季節、山吹色に染まる山々や谷をともに思い描きながら、日本の自然の素晴らしさを思い返していただけましたら幸いです。
山田耕筰作曲
「からたちの花」
白い白い、純白の花と、母と幼き子の別れ、自立。母子の心の結び付きと、からたちの花が織りなす物語。季節の移ろいとともに、お聴きください。
モーツァルト作曲
「喜びに躍りて」
はい、モーツァルトさんの出番です!
「旅をしない音楽家は哀れだ」という彼の名言通り、今回のタイトルにふさわしい作曲家の作品です。オペラ『フィガロの結婚』の1789年ウィーン再演時に、ヒロインのスザンナ役のために急遽書き下ろされた挿入曲。和訳題にある「喜」は、私の名前にもあり、昭和一桁生まれの父の名前にもある、大好きな文字です。皆様の人生も、喜び溢れることが続きますよう、願いながら歌わせていただきます。
モーツァルト作曲
オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」より「女は15にもなれば(デスピーナ役)」
「岩のように動かず(フィオルディリージ役)」
私が一番好きなオペラで、〝女は本当に浮気をしないのか?〟というテーマです。本当にそうなのか、婚約者たちにあの手この手で試される姉妹。2人はとても真面目で、様々な誘惑を撃退していきます。しかし、真面目であればあるほど、滑稽さも際立つ音楽です。私も、何かに対して大真面目に怒っている時、ふと、笑いが込み上げてしまうこともしばしば…。暗闇に差し込む光とでも言いましょうか。今回は、あえて、ストーリー通りではないアリアの順にしています。お手伝いのデスピーナに、「もっと嘘をついて、女王のように振る舞いなさい」とお説教されても、なお、頑な態度を崩そうとしないフィオルディリージ、という設定にしてみました。本当の展開が気になる方は、ぜひ楽しいオペラをご覧ください!
シューベルト作曲
「たゆみなき愛」
「夜と夢」
父親から教師になるよう言い渡されても、作曲への情熱は消えるどころか、ますます燃えていくシューベルトの歌曲。2曲は対象的な雰囲気ですが、どちらも、雨や嵐、夜空や月といった自然に光が当てながら、未来を輝かせる素敵な曲たちです。練習に躓き徒手空拳で足掻く私を、温かく励まし、希望をくれる曲たちでもあります。
プッチーニ作曲
オペラ「ラ・ボエーム」より
「私が街を歩けば(ムゼッタ役)」
「あなたの愛の呼ぶ声に(ミミ役)」
自由奔放なムゼッタと、控えめなミミ。それぞれの個性が光るアリアです。自信に溢れ、ものすごく芯が強いムゼッタ。自分の思いを通そうとする生き方にはパワーをもらいます。一方、遠慮がちで病弱なミミ。相手に呼ばれないと行動出来ない、しかも直接本音を言えない、悲しみ一直線のミミ。しかし、こういう女性に惹かれる人は少なからずいるような。令和は、女性の生き方が多様になったと言われますが、昔から、どの生き方でも命は光輝くのだと、確信の持てるアリアたちです。
「太陽と愛」
こちらも、プッチーニ作曲の歌曲ですが、「ラ・ボエーム」の終盤にも旋律が流れています。今回は、ミミとロドルフォの別れの雰囲気を残しながら、お届け出来たらと思います。
ヴェルディ作曲
「煙突掃除夫」
煙突を掃除したら、煤が付いて真っ黒になってしまいますよね。だけど、当時は欠かせない仕事。それを明るく「お掃除しますよ〜!」と、彼は町のみんなに呼びかけます。でも、誰も答えてくれなくて、だんだんしょんぼりしてきます。しかし!! それでも「おいらより幸せな者が、世界の他にいるだろうか!」と高らかに歌う彼。幸せとは、100%が主観であります。どんな状況でも、自分が幸せだと思ったら幸せなんだという、当たり前のようでいて、忘れやすいこの大切なこと。心をピカーッと光らせるエネルギーは、自分の中にあり!
ヴェルディ作曲
オペラ「運命の力」より
「神よ平和を与えたまえ(レオノーラ役)」
恋人が自分の父を誤って殺してしまい、逃げているうちに離れ離れになったレオノーラ。彼女は、修道院裏の洞窟で、神に祈りながら暮らします。長い年月、レオノーラは深い絶望の中にいて、神に平和と死を求め歌います。心からの祈りと、抑えきれない慟哭、どちらも人間に混在する感情を繊細に描いた、素晴らしいアリアです。かすかな光をたどった先に、何が見えるのか。これからも私にとって探していきたいテーマでもあります。
石川さん:
F.ショパン:ノクターン第13番 ハ短調 作品48-1
ショパンは生涯に21曲のノクターンを残しており、とりわけ聴かれる機会が多いのは第2番ですが、21曲それぞれさまざまな性格の物語があり、私にとっては宝箱のようです。
ショパン39年の生涯の中で30〜31歳の円熟期に作られたこれらの作品は、オペラ的効果を狙っているとの見方もあります。
重い足取りで紡がれる冒頭の旋律。中間部の安らかなコラールは次第に興奮を増していき、劇的な頂点に達するとその緊張感と興奮を保ったまま冒頭のメロディが奏でられます。
ショパンの祖国への思いも垣間見ることができる名曲です。
ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調作品66
言わずと知れたクラシック曲を代表する有名曲で、彼が4曲書いた「即興曲」の第4番に当たります。
1〜3番は(作曲家ゆえ当然生活の糧として)自身により出版されていますが、この4番だけは出版されませんでした。病の床でショパンは友人フォンタナに、自分の死後この楽譜を焼き捨てるよう依頼したそうですが、その遺志に反しフォタナはこの曲を出版。他の3曲を遥かに凌ぐ知名度を得ています。
冒頭と再現部の速いパッセージと、中間部の天使のささやきのようなメロディとの対比をお楽しみください。
あなたにとって音楽とは何ですか。
古畑さん:楽しみです。幸せの源泉です。無限に湧き出る温泉のようなもので、いつも温かく励ましてくれて、希望をくれます。特にクラシック音楽に触れると、何百年も前、地球の反対に住んでいた人々も、私と同じような悩みや喜びを味わっていたかと思い、ちょっと安心します。それを美しい音楽として昇華してくれた作曲家の方々や、世界に広め伝えてくれた演奏家の方々には、敬意しかありません。
また、生演奏は、その場その場で消えてなくなるのに、心にはずっと残り続けるのも、音楽の魅力だと思います。何度も思い出しては心を救い豊かにしてくれる、無限のコンテンツでもあります。たくさんの人と心を繋げることも出来るし、いろいろな場所を訪れたり、自分ではない人の気持ちを味わったりすることも出来ます。
皆様にとっての音楽とは、何ですか? 当日は演奏を通して、音楽について語り合えたら、とても嬉しいです。
石川さん:糧、空気、血液、ライフライン、さまざまな表現が出てきますが…とにかく「なくてはならないもの」ですね。逆に音楽を職業にしていなかったら何になっていたか考えてみますと…
実現可能性は低かったと思いますが、鉄道航空関係か、薬学、医療従事者を目指していたかもしれません。
母は看護師をしておりましたが、その影響があるのかは分かりません。
ただそのお陰で音楽を職業にするに至ることができたので感謝しております。
演奏会情報
2026年10月31日(土)古畑喜代美 ソプラノリサイタル A Journey Through Light~光をたどる音楽の旅~
会場:日暮里サニーホール・コンサートサロン
時間:16:30開演(16:00開場)
料金: 全席自由 2,500円
出演者

古畑喜代美 Kiyomi Furuhata ソプラノ
第5回DoIce musicaコンクール第1位。第3回同コンクール第3位。第27回JILA音楽コンクール第4位。第26回大阪国際音楽コンクール金賞。ハンガリー国立歌劇場元歌手A・レーティ氏や、イタリアの世界的ギタリストE・カテマリオ氏、神奈川交響楽団フレンズと共演。リサイタル3回。今夏ウィーンモーツァルトハウスで演奏予定。

石川和男 Kazuo Ishikawa ピアノ
武蔵野音楽大学卒、同大学院修了。 第2回ペトロフピアノコンクールをはじめ多数のコンクールに入賞。武蔵野音楽大学附属音楽教室講師を務める傍らピアニストとして様々な演奏活動を展開。現在コーラスグループフォレスタにて全国各地でのフォレスタコンサートおよび毎週月曜よる8時の『BS日本・こころの歌』に出演中。
曲目
平井康三郎:甲斐の峡
山田耕筰:からたちの花
モーツァルト:喜びに躍りて
モーツァルト:オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」より “女は15にもなれば” “岩のように動かず”
ショパン:ノクターン ハ短調 作品48-1[ピアノソロ]
シューベルト:たゆみなき愛
シューベルト:夜と夢
プッチーニ:オペラ「ラ・ボエーム」より “私が街を歩けば” “あなたの愛の呼ぶ声に”
プッチーニ:太陽と愛
ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66[ピアノソロ]
ヴェルディ:煙突掃除夫
ヴェルディ:オペラ「運命の力」より “神よ平和を与えたまえ”


