足立琴羽さん(声楽部門大学生の部第1位)第4回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

足立琴羽さん(声楽部門大学生の部第1位)第4回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

第4回東京国際管弦声楽コンクール入賞者インタビュー

足立琴羽 声楽部門大学生の部 第1位

三善 晃/歌曲集「聖三稜玻璃」より 青空に
A.トマ/歌劇「ハムレット」より さようなら、と彼は言った。信じておくれ。(オフィーリア役)

Q.ご入賞された今のお気持ち・感想を聞かせてください。

――率直にとても嬉しかったです。現在師事している日紫喜先生と共に結果を拝見し、「本当に良かった、ありがとうございます」と安堵と感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。これまで何度もコンクールに挑戦してきましたが、本選では緊張や体調に左右され、なかなか力を発揮できないことが多くありました。今回はとても良い緊張感の中、自分なりの表現で演奏し、今の自分のベストを尽くせたことが結果につながったのだと思います。一方で、もっとのびのびと歌いたかった部分があったり、最高音にかけてのピッチの揺れなど悔しさも残りました。それも今後の課題として大切にし、今回の経験を自信にこれからも成長していきたいです。

Q.当コンクールに参加されたきっかけを聞かせてください。

――我が家に当コンクールのチラシが届いたため、それを見て先生にご相談させていただいたことがきっかけです。

Q.本選での選曲について、選曲理由、作品の聴きどころについてお聞かせください。

――三善晃作曲「青空に」は、山村暮鳥の詩集《聖三稜玻璃》全4曲の中の1曲です。4つの詩を通して「わたし」が様々な出来事を目の当たりにし、精神的な変化を遂げていきますが、その中でもこの曲は最も大きな気づきを得て変化を促す場面だと感じています。現代的で複雑な響きをもつ日本歌曲でありながら、不思議な美しさに惹かれ、ぜひ挑戦したいと思い選曲しました。トマの《ハムレット》よりオフィーリアのアリアは、距離を置こうとする恋人ハムレットへの想いを抑えきれず、冷静さを保とうと本を読み上げますが、その内容に呼応するように感情があふれ出してしまう場面です。物語の比喩的な言葉に自身の感情を重ねながら、フランス語の美しい響きで心情を吐露する繊細さに魅力を感じ、何度聴いても心を揺さぶられる大好きな作品です。この心酔ぶりが、後の「狂乱の場」へ発展し、死へと向かっていくことを意識しつつ、美しい旋律の裏にあるオフィーリアの悲痛な心の叫びを表現しました。

Q.より良い音楽、演奏のために普段から心がけていることはありますか。

――作品全体のストーリーや歌詞を丁寧に読み込み、アリアであれば登場人物の心情や背景を自分なりに解釈するようにしています。その過程で、先生からの助言を受けながら、「どんな景色を見て」「どのような感情で歌うのか」を具体的に考え、音楽の表現へと繋げています。そのためにも言葉で整理する力が不可欠だと感じており、幼い頃から好きだった読書が、今の音楽づくりにも生かされているのかもしれない、と実感しています。

Q.思い出のレッスンはありますか。

――今年の夏休みの約2か月間で、大学の授業回数の半期分を超えるほどのレッスンをしていただきました。その日々はまさに怒涛で、歌に対する姿勢を改めて深く見つめ直す貴重な時間となりました。本当に真摯に取り組めば結果は後からついてくるのだと、今回のコンクールを通して実感しています。ここまで熱心に導いてくださる先生に、感謝してもしきれません。

Q.練習以外に音楽と向き合うためにしていることがあれば教えてください。

――本を読むことをはじめ、映画やアニメ、絵画など、さまざまな芸術作品に触れることで言葉や感情の表現力を養っています。また、実際にさまざまな場所へ足を運び、これまで見たことのない景色や音、匂い、人々に出会うことで、多くの刺激を受けています。そうした体験が、実際には経験したことのない状況や感情を、舞台上で歌や演技として表現するための大切な糧になると感じています。コンクールでの遠征や旅行を通して、その大切さを改めて気付かされました。

Q.最近のマイブームは何ですか。

――私は高校生の頃から、歌と同じくらいタピオカが大好きで、大切な試験や本番の前は「終わるまで我慢!」と決めて、無事にやり遂げたあとに糖分たっぷりのタピオカをご褒美として飲むのが定番になっています。このコンクールが終わった後も、もちろん飲みました!

Q.今後の意気込みをお聞かせください。

――今回の経験を通して、努力を重ねることの大切さと、支えてくださる先生方や周りの方への感謝を改めて感じました。これからもひとつひとつの出会いや経験を大切にしながら、自分にしかできない表現を追い求めていきたいと思います。また、音楽と誠実に向き合い、より深く心に届く音楽を届けられるよう研鑽を重ねていきたいです。