【優秀指導者賞受賞者インタビュー】西尾佳菜先生
- 2025.06.16
- コンクールオーディション
- tipc, インタビュー, 優秀指導者賞, 第11回東京国際ピアノコンクール

2024年に開催された「第11回東京国際ピアノコンクール」では、15名の先生が優秀指導者賞を受賞しました。
今回は先生だけでなく生徒さん本人の「こう弾きたい」を引き出せるよう共に音楽の楽しさを追求されていらっしゃる西尾先生にお話しを伺いました。
インタビュー
この度は第11回東京国際ピアノコンクール優秀指導者賞受賞おめでとうございます。弊会コンクールに関して先生の感想やご意見、レッスンされている際に心がけていること等をお聞かせいただければ幸いです。
早速ですが、ご入賞された生徒様にはどのような言葉をかけられましたか?
限られた時間の中で本当によく音楽と向き合われました。環境を整えるのに苦労されていたのも知っていたので我が事のように嬉しく、心からおめでとうとお伝えしました。時間芸術というたった一度、一瞬の時間に集中し良い演奏ができたことも素晴らしいです。
時間芸術というお言葉が心に刺さりました。限られた時間で努力し結果が報われた時には共に最大のやりがいを感じますね。
今回のコンクールで1番印象的だった思い出や出来事はありますか?
「いただいた講評がとても嬉しかったです。これらの講評をいただけるだけでコンクールに出る意味がありました」と、初めてコンクールに出られた生徒さんから聞きました。順位がつくコンクールですが、自信を失わずに前向きに次を目指していけるように言葉掛けしてくださっている審査員の先生方に感謝です。私もとても温かい気持ちになりましたし、おすすめして良かった、と感じました。
生徒様の素晴らしい成果により更なる目標への第一歩となっていますね。
レッスンの中では大切にされていることは何ですか?
先生の音楽の押し付けにならないように、生徒さん本人の「こう弾きたい」を引き出せるよう心がけています。
生徒様側から先生に対してこう弾きたい等表現について発信することは簡単ではないと自身の経験を振り返るとそう思います。先生と一緒に物語に置き換えて表現を考えたことはありますが、引き出すきっかけとしてはこれに似たようなものでしょうか。
私は普段から、生徒に「どう弾きたい?」「この部分、どんな意味だと思う?」「この表現で本当に納得できてる?」といった問いかけをよくします。年齢に合った言い方を工夫しながら、こうした質問を繰り返していくと、最初は戸惑っていた生徒さんたちも、だんだんと「自分で考える力」がついてきます。音楽は、人の感情(喜び・怒り・悲しみ・楽しさ)に働きかけるような、心を動かす音やメロディにあふれています。生徒さんが「この音、なんかいいな」と感じたとき、その理由を一緒に探れるように音楽理論もお伝えしていきます。そして見つけた音、響きを生徒さん自身の感性に合った形で表現できるよう、楽譜に書かれたルールと矛盾がないかを確認しながら、いろいろな演奏のパターンを一緒に試しています。
先生は理想の講師像のようなものはありますか?
元ウィーン国立音大教授である恩師のミヒャエル・クリスト先生です。一音読み間違いがあったとして、それがどのように正しくないか、弾けないところがあったとして何故弾けないか、音楽理論が楽譜の内容を読み解く上でいかに大切か譜面の中に隠れている宝物に気づかせてくださりました。聴く耳を、真の感じる心を育ててくださりました。「先生がいないと」ではなく1人で向き合えるよう知識を授けてくださいました。とても根気と時間がかかることですが、私もそのように生徒さんと向き合いたいと思っています。
最後に今回ご入賞された生徒様へ日頃なかなか直接言えないメッセージなどがあればお願いいたします。
幼い生徒さんは保護者の方がレッスンやお家での練習にもついてくださり素晴らしい結果につながりました。「ピアニストになりたい」の言葉は私にとってとても嬉しいプレゼントです。コンクールに出場する人はみんな「頑張って」います。その中で順位がつくのがコンクール。それでも追い詰められることなく、ただ音楽に真摯に向き合い情熱を失わないで欲しい。常に喜びを持ち続けてください。
インタビューにご協力いただきましてありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いします。
プロフィール

西尾 佳菜
にしおかな, ピアノ
桐朋学園大学音楽学部演奏科を卒業後ウィーンへ留学。玉置善巳、ミヒャエル・クリスト氏に師事。これまでに毎日新聞コンクール、日本クラシック音楽コンクール、ジャパンピアノコンクールなどにて受賞。新聞社の後援を受け、日本各地でのソロリサイタルを開催する他、イタリア、フィレンツェのドゥオモでは邦人初のソロリサイタルを開催、ウィーンのコンツェルトハウスではブラチスラバオーケストラと共演するなど国内外にて演奏活動をしているほか、慰問演奏などにも力を入れている。ベーテン音楽協会、日本ピアノ研究会より最優秀指導者賞、ヨーロッパ国際ピアノコンクール、かわさきピアノコンクールより特別優秀指導者賞、東京ピアノコンクールよりピアノ教育者賞、石川音楽協会より指導者賞を受賞。東京国際ピアノコンクール、日本クラシック音楽コンクール全国大会などで審査員を務める。
-
前の記事
【優秀指導者賞受賞者インタビュー】水谷京子先生 2025.06.16
-
次の記事
【優秀指導者賞受賞者インタビュー】鮒井朋子先生 2025.06.16